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科学的介護の実現に向けて 導入されたCHASEとは?

Chase Main

これまで厚生労働省では団塊の世代が75歳以上となる2025年に向けて、高齢者が自分らしく地域で暮らせるような議論がなされてきました。しかしこれからは、もっと先のことに目を向けていかなければなりません。

そのような中で「科学的裏付けに基づく介護に係る検討会」では、介護サービスの需要が増大すると予測されることから、介護に関するサービス・状態等を収集するデータベース「CHASE」の本格運用に着手しています。いったいCHASEとはどんなものなのでしょうか。
こちらの記事ではCHASEが介護業界にどう取り入れられていくのかを見ていくとともに、2021年4月の介護報酬改定から本格実施となる科学的介護の内容についても解説します。

科学的介護とは?

これからの介護業界のあり方として国が目指している「科学的介護」とは、介護サービスを利用する利用者の自立支援や重度化防止を目的としています。
介護現場から収集した利用者情報を国が管理するデータベースに蓄積し分析、その分析結果を介護現場にフィードバックして、利用者に合った介護サービスを提供していくことが科学的介護です。

これまで介護業界では事業所や施設ごとの工夫によって、質の良い介護サービスが目指されてきました。
しかし医療・看護分野ではすでに、科学的裏付けのある根拠に基づいた医療が行われています。

そのため今後は介護業界も同じように科学的な裏付けに基づいた介護サービスを提供し、介護サービスの質を高めることで、医療・看護・介護が連携した組織となることが重要であるとされています。

介護業界のデータベースには、2013年からすでに稼働している「介護保険総合データベース(以下、介護DB)」、2019年から始まっている通所・訪問リハビリテーション事業所で利用する「VISIT」があります。
「VISIT」は、「monitoring & eValuation for rehabIlitation ServIces for long-Term care」の大文字部分を略した通称です。
これらはどのように介護業界で活用されているのでしょうか。

科学的介護を行うためのデータベースとは?

介護業界のデータベースで2020年度現在、本格導入となっているデータベースには以下のようなものがあります。

介護業界のデータベース
  • 介護保険総合データベース(介護DB)
  • VISIT

介護DBでは、事業所や施設から要介護認定情報や介護レセプトなどの情報が収集され、VISITでは通所・訪問リハビリテーション事業所から、リハビリテーション計画書などの情報が収集されています。
VISITによるデータ提出の評価として、提出した事業所や施設には「リハビリテーションマネジメント加算(IV)」が加算されます。

これら2つのデータベースの他に、科学的介護に必要不可欠と新たに検討が進められているデータベースが今回注目のCHASEです。
CHASEとは、どんなものなのでしょうか。

より科学的介護を行うための、CHASEとは?

CHASEは、高齢者の状態・ケアの内容などのデータを収集します。
名称は「Care, HeAlth Status & Events 」の大文字部分を略した通称で、2019年度からデータベースの開発を行っており、2021年度からVISITと一体化して本格運用されます。
VISITと同様、データ提出をした事業所や施設に対する評価として加算の新設や拡充を行う予定です。

国としては CHASEとこれまでにあった介護DBやVISITを合わせて連携させ、利用者情報を一体的に活用し、より有益な解析を可能にしたい考えです

介護職員に与える影響とは?

これらデータベースの本格運用は、2021年4月からの介護報酬改定に向けて急ピッチで進められているため、今後早くに多くの事業所や施設でデータベースへの情報提出が業務に含まれてくるでしょう
介護DBは事業所や施設が国保連に提出する介護レセプトの提出で情報が収集されていますが、VISITに関しては、「使用している介護ソフトがVISITに対応していない」ことがあり、入力への負担感が問題となっています。

CHASEについても導入する事業所や施設が厚生労働省に利用申請を行い、情報入力するのでVISIT同様、入力に負担がかかることが予測されています。
CHASEに対応した介護ソフトを利用している場合は、介護ソフトが自動的にCHASEに合ったファイルを作成してくれるので転記する必要はありません。そのため国としてもそれに対応した介護ソフトの拡充を進めています

このように科学的介護の取り組みを進めるためにCHASEが導入されたのですが、介護ソフトの拡充など負担なくデータ提出できるようになるまでには、多少の混乱が生じるのではないかと考えることができます。

LIFEなど今後の取り組みは?

厚生労働省は2021年度からVISITやCHASEを一体的に運用するにあたって、この2つを「科学的介護情報システム LIFE(ライフ・Long-term care Information system For Evidence)」という名称に統一します
事業者や施設に対して、科学的介護への取り組みを分かりやすく紹介し、浸透を図っていくためです。

すでに運用が始まっている VISITにおいては2019年3月末時点で577事業所が参加していますが、通所・訪問リハビリテーション事業所の数から考えると、まだまだ少ない状況のため、もっと多くの事業所に参加してもらえる仕組みにしなくてはなりません。
VISITやCHASEは任意ですがデータ提出により、事業所や施設に加算がつきますので、その事業所や施設が質の良い介護サービスを行っている証になります。
加算によって事業所や施設の収益もアップすることが予測されますので、介護職員の皆さんのやる気ややりがいにもつながりますね。
今後は誰でもが簡単に、そして負担なくデータ共有できる仕組みで、介護業界のサービスがしっかりと評価される時代になって欲しいものですね。

参考:「医療・介護データ等の解析基盤に 関する有識者会議」(第10回) 参考資料集 厚生労働省 老健局 保険局
介護保険総合データベースの活用について 厚生労働省 社会保障審議会
科学的介護の推進、介護関連DB等の更なる利活用等 厚生労働省 老健局

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